
同じ写真であっても、トリミングする部分で与えるイメージや伝わる情報は大きく変わってきます。
デザインの内容や目的にあったトリミング範囲を考えることが大切です。それぞれの写真はトリミング次第で未来や過去を思わせる写真になったり、または奥行き感のある写真にすることができます。
この記事ではトリミングした情報と空間を生かしたトリミングについて説明いたします。
Contents
同じ写真でもトリミング次第でイメージはまったく異なる!
トリミング範囲で伝える情報は変わる「写真の役割」とは?
トリミング範囲で写真の役割は変わってきます。
例えばプロのフォトグラファーが撮影した写真は、一部分のみを撮影するトリミングした撮影は行わずに使用するのが一番良いです。ですが、デザインをするうえで写真も読み手に伝える情報の一部として扱い配置をしてレイアウトをすることが通常の流れです。
写真はレイアウトの表現次第で必要に応じトリミングをすることが多いです。
トリミング(切り抜き)とは、デザイン上で写真の不要な部分をカットしたり、写真に含まれる情報をカットすることで写真からの情報を整理する作業のことです。同じ写真であっても、トリミングの範囲次第で読み手に与えるイメージは大きく異なります。
そのため、写真のどの部分に焦点を置くかを決めたうえで、デザイン要素の1つとして配置する必要があります。目的や内容に合わせたトリミングをすることが求められます。
トリミングをする前に制作物の目的を把握しておこう!
写真をトリミングする際にはどのようにするのかを先に考えることが必要です。
トリミングする前に「このデザインで読み手に伝えたい情報は何か」と言う目的を理解しておきましょう。タイトルやキャッチコピー、本文、キャプションなどの原稿がある場合は、内容を確認し、理解しておきましょう。
制作物によっては写真全体ではなく、訴求したい写真部分だけに焦点を絞ってデザインレイアウトを進めるほうが効果的な場合もあります。
全体写真とトリミングの効果
下図のどちらの写真が「なすびのおいしさや新鮮さ」が読み手に伝わるでしょうか。

左の写真にはなすび以外の写真情報が入っています。
それに対して右の写真ではトリミングしたことでなすび以外の情報をカットしています。右の写真のほうが、文章の内容と合っているイメージを感じます。
色々なトリミング方法を見てみよう!
トリミング(切り抜き)とは、不要な部分をカットすることだけを指す言葉ではありません。
1枚の写真を目的や必要に応じて2つに分割したり、写真の必要な部分を切り抜いたりする作業もトリミングです。下図では同じ1枚の写真を使用して、いくつかのデザインレイアウトに応用した例を紹介します。
写真のトリミング次第で、紙面のイメージが大きく変わることが見てわかると思います。
元の写真はこちら
元写真です。

下図では上図の写真を使い、色々なトリミング技法を説明します。
ほぼ元画像のまま配置
自然と人物の対比(コントラスト)を一度に見せることで「自然の雄大さや素晴らしさ」を強調したデザインです。

1枚の写真で多くの情報を伝えられます。シンプルなレイアウトが表現できています。
人物にフォーカスしてトリミング
人物を主役にしたデザインレイアウトです。

人物にフォーカスした分だけ、雄大な自然の中にいるという情報が少なくなりました。今回の例ではそれを補うために、写真配置を1つ追加して自然の写真を配置しています。
自然にフォーカスしてトリミング
自然を主体にしたデザインです。

「雄大な大自然」がデザインテーマのように感じられます。今回の例では雰囲気を伝えるために、写真配置を1つ追加して人物写真を配置しています。
四角版+切り抜き版
四角版と切り抜き版の組み合わせです。

人物や山の形を切り抜くことでデザインに動きが出ました。今回の例では本文のテキストを山並みに沿って配置することで、楽しい山道が続くような効果にもなっていると感じます。
空間を生かしたトリミングで時間軸や奥行きの演出をしよう!
空間を生かしたトリミングを表現するには、写真のトリミング次第で未来を感じさせる写真や、過去を思わせる写真、または奥行きを感じる写真に変えることができます。
トリミングにより生まれる空間演出は、注目させたい被写体を意図的に写真の中心からずらしてトリミングします。そうすることで、注目させたい被写体との間に空間ができ、その空間に意味を持たせることができます。
例えば、人物写真で横を向いた写真があり被写体に方向性を持っている場合は、被写体の視線の先に空間を設計することで「未来や将来、その先に何かがある」と思わせるようなイメージを表現できます。
視線と反対方向になる背後に空間を設計すると「過去やその前は」と思わせるようなイメージを表現できます。

参考として下図に例を用意しましたので、実際に見比べてみましょう。
視線の先に空間を設計した場合
視線の先に空間を設計すると空間に広がりが生まれます。

前へ踏み出す感じや、前向きなイメージになります。
背後に空間を設計した場合
背後に空間を設計すると視線の先に広がりがなくなります。

何かを思い返すようなイメージになります。
デザインするときの写真被写体サイズを意識しよう!
寄りの写真と引きの写真では仕上がりイメージが大きく変わる!?
同じ写真でもトリミング次第で「大きく寄りの写真」にするか「小さく引きの写真」にするかでデザインの仕上がりイメージは大きく変わります。
写真からどの情報を読み手に優先して伝えたいかにより、メインで使用する写真のトリミング方法を考えます。
写真の被写体全体を見せる配置
引きの写真を大きく使うことで、被写体の「見た目の質量」や「サイズ感」、「どのようなイメージで置かれている状況か」を写真の情報力ではっきりと伝えてくれます。

インパクトや迫力はありませんが、きれいで整然としたイメージになります。
見た目のディテールを強調する配置
寄りの写真にすることで、「使われている素材の状態」や「見た目からくる味・食感」などのディテールが強調されるため、人の五感に訴えかけるイメージになります。

紙面全体にインパクトも感じられ強い情報発信力となります。
顔の占める割合?フェース率も覚えておこう!
フェース率とは、文字通り人物画像における「顔の占める割合」です。
人物画像に対して顔の占める割合が大きい場合は「フェース率が高い」と言います。フェース率が高いと知的、信頼感などのイメージになります。反対にフェース率が低くなると、写真に体が入り込み肉体的な魅力が強調されます。

選挙ポスターなどでは信頼感や知的なイメージを伝えるため、フェース率が高い写真が多いです。そのため選挙ポスターは張り出されると顔がずらりと立候補ボードに並ぶのです。
空間を生かしたトリミングや写真配置デザインのまとめ
- 同じ写真でもトリミング次第で伝わる情報は大きく変わる。
- トリミングする目的を理解することで最適なトリミングになる。
- 空間を活かすには被写体を中心からずらすことで可能になる。
- フェース率を理解することで使い所がわかる。
空間を生かしたトリミングや目的を理解した写真のトリミングは読み手に瞬時に情報を伝える1つの技法です。
デザインレイアウトを行うときには写真そのものがもつ情報を最大限に引き出すトリミングで掲載すると読み手に多くのことが伝達できます。
提供される写真によってはその効果を引き出すことが難しい場合が発生することも時々あります。その時は効果を最大限に引き出すためにより良い写真がないか、撮影をしっかりと行うか話し合って決めていきましょう。
トリミングはデザインをする方やデザイナーにとっては日常的に行われる作業ですが、改めて理解することでより良いデザインへと発展させることができます。