
デザイン初心者は書体選びに時間がかかることも多いと思います。書体はそれぞれ個性があり少し特徴を覚えることで、目的と用途に合わせた最適な書体を判断できるようになります。
また1つのデザインで使用する書体を厳選することで統一感を演出できます。この2つのポイントについてこの記事ではわかりやすく説明しています。
Contents
書体の個性を把握しデザインに活かしていくポイントとは?
最適な書体を選ぶための基礎知識として「書体の個性を把握しておく」ことが大切です。デザインの用途や目的に合わせて最適な書体を選択するには、和文と欧文の特徴を知ることが必要です。
書体には個性があることをご存知でしょうか。
和文書体は大きくわけて「ゴシック体」と「明朝体」があります。欧文書体は「セリフ体」と「サンセリフ体」に分類できます。同じゴシック体または同じ明朝体であっても、開発された時期やメーカー、作者により書体の個性はさまざまです。
和文書体の印象の違いとは?
まずは下図を見てみましょう。ひとまとめに「明朝体」といった場合でも、ふところが狭く、字面が小さい書体からは筆文字のなごりを感じられます。歴史的や古典的でかっちりとしたフォーマルな印象を受けることだと思います。
文字の線や飾り(うろこ)の形にも特徴があります。一方で、ふところが広く、字面が大きい書体からは現代的でカジュアルな印象を感じます。

このことは、ゴシック体でも同じ傾向が見られます。書体の個性はこのような細かなところでも見られます。
欧文書体の印象の違いとは?
セリフ体は作られた年代によりカテゴリ化されています。古典的な印象のものから「ベネチアン」、「オールドフェイス」、「トラディショナル」、「モダンフェイス」へと、現代的な印象を感じる流れで進化しています。
縦軸の入り方や飾り、セリフ(うろこ)の形状をよく見てみましょう。サンセリフ体は、幾何学的な形からモダンな印象を感じます。
セリフ書体の分類を見てみましょう。
- 「ベネチアン」カリグラフィーの名残が強く、文字字体に傾きが多く見られます。
代表的な書体 Adobe Jenson Pro、ITC Legacy Serif - 「オールドフェイス」ベネチアンよりも太い部分と細い部分の強弱が見られます。
代表的な書体 Garamond、Galliard - 「トラディショナル」オールドスタイルとモダンの中間的な書体になります。
代表的な書体 Caslon、Baskerville、Times - 「モダンフェイス」極端にセリフ部分が細い書体になります。
代表的な書体 Didot、Bodoni

新しくなるにつてれ「O」の縦軸が垂直になり、「e」の横軸が水平になります。セリフの形も幾何学的に変化しています。このような形状の移り変わりも書体の個性と言って良いでしょう。
セリフ部分も見てみましょう。
- ブラケットセリフは、伝統的で優雅な印象です。
- ヘアラインセリフは、力強くモダンな印象です。
- スラブセリフは、視認性が高いです。

セリフ(うろこ)にも書体ごとに特徴あり、ブラケットセリフは書体の形状として時代的にはもっとも古い形です。
では、書体を使用するにあたりビジュアルでイメージ的にカテゴリ分けをしてみましょう。下図では、書体のイメージをカテゴリ分けをしています。それぞれの書体の個性を把握しカテゴリ分けをしておくと便利です。


デザイン制作時にフォントリストより、闇雲に書体を選ぶのではなく、デザインのイメージに合った書体を容易に選択できるようになります。
デザイン初心者の間はこのようなカテゴリ分けをしておくことで、書体の個性を理解しながら適切な書体を候補として考えていくことができます。
デザイン初心者ではなくてもカテゴリ分けした書体はいつでも便利な参考データとして活用できることでしょう。
最適な書体を選ぶためのポイントとは!?たくさんの書体を使わない!
1つのデザインで使用する書体の種類を絞り込むことで、紙面全体にスマートな統一感を持たせることが出来ます。そのため仕上がりが美しくなります。
1つのデザインや紙面制作には2〜3種類に書体を絞り込む、または厳選するようにします。なぜ絞り込んだり厳選したりするのか、それは書体にはそれぞれ異なる印象があるからです。
そのため1つのデザインや紙面上で様々な書体を使うことはあまり好ましくありません。ただし書体を増やして賑やかにするなどの意図的にした場合等は除きます。
印象のことなる書体が1つのデザインや紙面上に混在すると、全体の統一感が損なわれてしまうため、デザインの意図がよくわからないものになり明確になりません。
デザインや紙面の仕上がりを美しく見せるためにも、はじめのうちは使用する書体を2〜3種類に絞り込むことや厳選することを行いましょう。使用する書体の数を減らすだけで、デザインや紙面全体の統一感を損なうことなく表現できます。
例えば書体名称が違う明朝体をいくつか使用したりするような印象の異なる書体を1つの紙面に混在させると、それぞれの書体が持っている印象力に左右されデザインの統一感が損なわれてしまいます。
デザイン的な効果を狙う場合を除き、基本的には印象の異なる書体を1つの紙面に使うことは避けるほうが良いでしょう。
書体の個性を理解し強調と調和のバランスがポイント!
デザインや紙面上で使用する書体の数を絞り込んだり、厳選したりすると統一感は出せますが、見た目に全体的な動きがない、おとなしかったり、つまらない、単調なデザインになることもあります。
また書体の力による情報の重み付けが均一になってしまうため、読み手に対して重要な情報を伝えることが少し難しくなることもあります。
一見前述の内容から矛盾しているように感じますが、デザインに必要なことは「強調と調和のバランスがポイントである」ということです。
デザインに使用する書体の要素をすべて統一しては見た目の面白みに欠けてしまいます。では、バラバラにしてしまうとデザインとは言えない作りになってしまいます。
デザインや紙面で使用する書体を選択する際は、デザインや紙面上での役割や目的、要素の重要性に応じて適切な書体を選択することが大切です。
例えば、資料や広告等のタイトルや日付といった「見た目に強調したい箇所」には太めのゴシック体を使用し、内容文章や解説文等の「しっかり読ませたい箇所」や見出しなどには明朝体の書体「ファミリー」を使い分けして使用することを考えていきましょう。
2〜3種類の書体を上手に使い分けることで、情報の種類ごとにグループ化が生まれ明確な違いを表現することができます。
参考として下図に会議などで使用される資料デザインの一例を作成してみました。同一面に異なる書体を複数種類使用しているため見た目が悪く統一感がありません。

下図は使用する書体の種類を絞り込み「強調と調和のバランス」をとった例です。使用する書体を2種類に絞り込むことで統一感を感じられます。

1つのデザインや紙面上で強調する部分と調和させる部分を共存させることは意外に難しいです。
特に相性の良い書体の組み合わせを知らないデザイン初心者のうちは、組み合わせを何度も変更して調和をとっていく等の苦労をすることも多いと思います。
そのような場合に重宝するのが、書体の太さや幅がデザイン的に統一された「ファミリー書体」を使用すると良いでしょう。
ファミリー書体とは?
書体の「ファミリー」とは、文字の太さ(ウエイト)や幅、角度などにバリエーションを持たせた同一デザインの複数書体です。
ファミリー書体にはデザイン的に統一されているため、デザインや紙面全体の統一感を損なうことなく強弱をつけたい場合など、さまざまな制作場面で役に立ちます。
デザイン初心者はファミリー書体を使用して制作を進めていくことで調和を保ったまま良いデザインへと仕上げることができます。お勧めの書体です。
ファミリー書体の種類とは?
和文と欧文ともに、世の中には数多くのファミリー書体が存在します。
例えば、和文書体の「小塚ゴシック」や「小塚明朝」には、EL(ExtraLight)、L(Light)、R(Regular)、M(Medium)、B(Bold)、H(Heavy)の合計6種類ものウエイトが用意されています。
また、欧文書体にも同様にファミリー書体があり、Light、Roman、Bold、Italicなどのウエイトが用意されています。
ウエイトの名称や種類は書体によって異なります。一度使ってみて書体の印象を覚えておきましょう。またはわかりやすいようにファミリー書体一覧のデータを資料として保管しておくこともお勧めです。
デザインではファミリー書体を1種類として捉えて数えます。使用する書体を2〜3種類に厳選した場合でもファミリー書体を使うことで、ウエイトの種類が増えてそれ以上の種類の書体を使うことが出来るため便利です。
書体の個性を把握しデザインに活かすポイントのまとめ
- 書体の個性を把握することで使用するときにデザインのイメージが浮かぶようになる。
- 同じ分類の明朝体やゴシック体でも書体それぞれで印象が異なる。
- デザインをする際には書体は極力2〜3書体に絞り込み統一感がでるようにする。
- 書体の個性を理解して調和のとれるデザインとなるように心がける。
- ファミリー書体はウエイトがありデザインで使いやすい書体である。
- ファミリー書体のウエイトは書体ごとに名称が異なる。
筆者である私も最初は世の中にある書体の多さに驚き、書体を色々と試して使用した経験があります。
色々と書体の冒険を行いデザインを楽しんでいましたが、今ではすっかり使用する書体の種類は落ち着いてきました。これは冒険した結果、落ち着いたといって良いかもしれません。
デザイン初心者の間は様々な書体に触れてどのような時に使えそうか沢山試してください。使ってみないとその効果を体験することはできません。
使っていく中でそれぞれの書体の特徴がわかり、書体の形をみるだけで明朝体だけど書体名はこれです。と言えるようになります。様々な書体を見て使って体験することで書体の知識は入ってくるものだと私は思います。
こんなことを書いているとこの記事に書いている内容は読まなくても良いのではないかと思われるかもしれません。
しかし、書体の知識はデザインをするうえで必要な知識なのです。例えば「厳格」や「威厳」等の表現をデザインでする際には書体の知識がなければ同じ明朝体でもどの明朝体がよりイメージに近いのか判断することができません。
書体をたくさん使用してみたあとにもう一度この記事を読んでいただければ更に知識が深まることだと思います。