
シンメトリーデザインは応用することで関係性のあるデザインを視覚的に強調し見やすくなる特徴があります。シンメトリーデザインを応用し紙面の比較対象を作っていきましょう。
また、黄金比や白銀比は世界のデザインでもよく使われる比率であり、デザイン性を出していくにはその比率を覚えておく必要があります。ここでは、シンメトリーデザインの応用と黄金比、白銀比を説明いたします。
Contents
シンメトリー応用テクニック、比較を利用し関係性のある内容を強調しよう!
シンメトリーデザインテクニックはユニークな表現技法!
紙面内容に同等の関係性をもつ要素が複数ある場合は、「比較」を用いることで、それら要素の関係性を視覚的に強調することができます。
「比較」とは、紙面を中央から二分割にして関係性の強い要素同士を対比させるレイアウト技法です。対比するお互いの関係性を強調したい場合に使うと良いでしょう。
上手に比較レイアウトができると、とてもユニークな表現になるため読み手に強調を意識させインパクトなイメージを与えることができるでしょう。そのため、この技法は色々な広告で頻繁にレイアウトが使われています。
例えば、海外では自社と他社の製品をストレートかつ大胆に比較した広告をよく目にします。日本では大胆かつ派手な表現は稀ですが、通販カタログではよくある「商品の使用前後(Before-After表現)」の比較などで多く目にします。
シンメトリーデザインの比較基本とは!?
「比較」では、内容の要素同士を同等に扱うことが基本になります。
そのため、通常は対称性を感じさせるレイアウトを採用します。簡単に言ってしまうと「関係性があり同じ大きさで要素を配置すること」であると覚えておくといいでしょう。対称性を感じさせるレイアウトには次のものがあります。
①鏡面対称
鏡面対称は、鏡写しのように左右が反転した構図でレイアウトをする技法です。重要度が同じ要素を複数扱う紙面や、対談、対比広告などに向いています。

②点対称
点対称は、点を軸に回転させた構図でレイアウトをする技法です。軽やかな印象のある、バランスのとれたレイアウトを表現できます。

③平行移動
平行移動は、同じレイアウトを平行移動させた構図でレイアウトする技法です。重要度が同じ要素を複数扱う紙面などに向いています。

なおシンメトリーデザインによる比較の視覚的構造は、対称する要素の差異を強調するだけではなく、並列的に見せることや一見異なるものの間に共通性をわかりやすく表現することなどにも適しています。
シンメトリーデザインの比較具体例
被写体の内容が違う場合でも対称性のあるレイアウトを採用すると、読み手は無意識のうちに両者を見比べて比較するため並列関係にある要素だけでなく、表現の意図として「静と動」や「スポーティーとワイルド」といった、対照的な要素を比較しても、面白い効果を表現できます。
点対称を使ってレイアウトしています。点対称では鏡面対称や平行移動よりも対称性は少し弱いですが、配置要素が左右で共通しているため、左右の関係性も強調されて面白い表現になります。

アクションの強弱が異なる被写体を同等に扱いシンメトリーデザインで比較させた例です。異なる被写体イメージをシンメトリー比較する場合は、配置要素を同等に扱い対称性のある構図にすることで表現すると良いでしょう。被写体同士の関係性が強調されて、見た目に調和のとれたイメージの構図にできます。

商品の「色」をシンメトリー比較をさせるために対称性のあるレイアウトを使用した例です。商品同士の特徴がわかりやすく、引き立ちます。商品の違いがはっきりとわかります。

スポーティーとワイルドを、比較を用いて表現しています。鏡面対称の構図を使用することで、お互いの関係性が強調され、ストーリー性が感じられます。

世界で有名な比率、それは黄金比と白銀比!?
デザインの先人達が気づいた美しいと感じるデザインの特徴とは?
ほとんどの人が「美しい」と感じてしまう、とても素晴らしい比率があります。それは「黄金比」と、日本人には馴染み深い「白銀比」があります。この2つの比率を理解して自分なりにデザイン要素として取り入れてみてはどうでしょうか。
黄金比とは
近似値1:1.618(約5:8)の比で表される比率です。


この比率で作成された四角形を「黄金長方形」と言います。黄金比で面を分割すると「黄金分割」になります。この比率は古代ギリシャ時代から「美しい比率」として認識されており、ミロのヴィーナス像やパルテノン神殿など、美しいとされている建築物や美術作品の多くに取り入れられてきた比率です。
現在でもブランディングを意識する企業等は黄金比を使いロゴデザインや設計に取り入れられています。日本でもユーザーが増えてきたApple社のiPhone等、さまざまなものに応用されデザイン要素として使用されています。
また、自然界のかたつむりの殻の渦や台風の渦の形等の成長パターンなどにも見られます。
白銀比とは
近似値1:1.414(1:√2<ルート2>)の比で表される比率です。

この比率で作成された長方形は、「√2<ルート2>の長方形」と呼ばれ、A4、B4などの紙規格サイズの比率も同じです。また、長辺で2等分すると、元の白銀比の長方形と相似になるのが特徴です。

この比率は、日本の伝統的な建築物の比率によく使用されています。ほとんどの方はご存知だと思いますが、五重塔や法隆寺は歴史の教科書等にもでてきます。この建築物も白銀比の比率で造られています。
そのようなことから、日本人には教科書や実際の建築物を通して親しみのある比率です。日本の伝統的な建築物でよく使用されていることから別名「大和比」とも呼ばれています。
黄金比を利用した横長の黄金長方形と比べ、馴染みのある√2<ルート2>長方形からは、日本の伝統的なイメージからどことなく静的な印象を感じ取れます。
黄金比・白銀比デザインへの応用を考えてみましょう!
黄金比や白銀比をデザインに応用したものは様々あります。
例を上げると黄金比を用いた用紙分割方法やグリッド設計方法などがあり、他にも画像や図版を黄金比に合わせてトリミング配置したり、白銀比になるように印刷やデザインでは実際には表示しない補助線を引いて文字要素を配置したりすることがあります。
黄金比や白銀比は比率であり、その比率をどのように使用するかは、制作する本人である、あなた次第といえます。
日々プレゼンテーションや資料作成をする方やデザイナーの制作物としていろいろ工夫して、さまざまなレイアウトに挑戦するといいでしょう。新たなレイアウトやデザインの発見もあるかもしれません。
ただし、デザインは原則的には自由なものであり、黄金比・白銀比も決まった使い方があるわけではなく、完璧なルールは存在していません。
窮屈に黄金比や白銀比にこだわる必要性はまったくありません。比率ばかりを意識しすぎると窮屈で退屈なデザインになる場合があります。デザインのテイストやイメージ、目的に合わせて使い分けることがデザインの見た目を向上させるためのポイントです。
黄金比を元にしたグリッド設計
黄金比を元にグリッドを作成しました。この場合、グリッドの比率、版面の比率、マージンの比率の全てがすべてが黄金比になります。下図は活用例です。

黄金分割
安定しやすく、落ち着いた印象を与える構図です。1/3の法則と似ていることでも有名な分割方法です。

白銀比を元にした版面設計
版面とマージン、画像の比率を白銀比を使用した例です。若干横長の黄金比に比べ、紙面と同じ比率の白銀比を用いると、落ち着いた安定感が感じられます。

シンメトリーデザインや黄金比・白銀比のまとめ
- シンメトリーデザインのテクニックを利用し対称性がある関係性に強弱をつける。
- 鏡面対称、点対称、平行移動の特徴を理解し要素に合わせた使い分けをする。
- 黄金比は近似値1:1.618(約5:8)
- 白銀比は近似値1:1.414(1:√2<ルート2>)
- 黄金比・白銀比を理解することで今後のデザインへの取込方が変わってくる。
デザインを行っていく上でいつかは自分の作り方を見直し、新しい要素やテクニックを磨いていく必要性があります。
最初はよく出来ている制作物を真似ながら腕を磨いていくことが良いと思いますが、ある一定ラインまで自分が成長すると「何を取り入れ、勉強すべきなのか?」悩むこともあります。
この記事で書いていることは解説に近いですが、シンメトリーデザインや黄金比・白銀比を改めて座学を通し理解をすることでデザインへの取込方が変わってくることだと思います。