デザイン系の就職活動では、履歴書や職務経歴書と同じくらい重要になる書類が、ポートフォリオです。
未経験の方は特にポートフォリオの作り方がわからないと思います。今回は、A4サイズで自己紹介、作品紹介の作り方やポイントを書いています。はじめて作る方に参考になるデータも準備しています。ぜひ、ご活用いただき就職活動のモチベーションをアップしていきましょう。
未経験でもポートフォリオ作成でPR、そのやり方は!
そもそもポートフォリオって何!?
ポートフォリオとは複数の書類がまとめられた状態のことを言います。
ポートフォリオの内容は、各個人で変わってくるものです。また、業界が変われば見せ方も変わります。ここでは、印刷デザイン系のポートフォリオの作り方について、未経験・経験者問わず自分のポートフォリオを作成してみましょう。
ポートフォリオの意味、これを少し知っておくとポートフォリオを作成するときに、だからこの形で作るのだと言うことがわかると思います。
ポートフォリオは「複数の書類がまとめられた状態のことを言います」と書いていますが、わかりやすくポートフォリオを日本語に訳すると「書類を持運ぶ入れ物(ケース)」です。すごく簡単に言うと「書類ケース」です。
なんだ、書類ケースなのかと思いますが、意外にここを理解していないと作る段階で、失敗してしまいます。書類を持運ぶケースですので、1つ1つの書類が入れられるものを準備することが好ましいと思います。
ここを理解しておかないとポートフォリオ作成に失敗してしまいます。ノートに作成してしまうとページ全部に作成することは難しいです。空白ページは無駄なページとなり見る側も何か書いているか見て行かなくてはいけません。
また綴じられた状態のノートは、作成した部分は固定した内容になってしまいます。ポートフォリオは企業側に自分を売込む内容を書いていきますので、企業に合わせて内容が変更できるように、1枚1枚が入れられるA4サイズのクリアファイル(A4サイズ210mm×297mmが入るファイル)が良いでしょう。
ここでA4サイズを選択する理由としては、比較的多くのご家庭にあるインクジェットプリンターがA4サイズであることがあげられます。
A4サイズであれば、自分で準備したいときにすぐに準備ができます。倍のサイズであるA3サイズ(297mm×420mm)は、プリンターのサイズも大きければ、プリンターの値段も高いことからご家庭にお持ちの方も少ないかと思います。
ポートフォリオの意味から考えますと、A3サイズは持ち運びしやすいとは言い難いと思います。ただサイズは大きいので、インパクトはあります。大きなサイズの作品が中心であればA3での作成も良いかと思います。
自分を知る!自己分析その進め方とは
ポートフォリオの意味はわかりましたが、どのような内容を入れていくのかと言いますと、一言で言うと「自己分析の小冊子」です。
突然、自己分析と言っても何を書いていいのか分らないかと思います。
企業に対して自分を売込む事を考えると、まずは自分自身の紹介です。これは新卒の方であれば学校の授業の中での作品を交えながら紹介していきます。
転職の方は、今までの仕事で何を行い経験をしてきたか、仕事を通じてどのような事ができるのかを書きます。
新卒でも転職でも自分の考え方や、作品を作る進行の仕方をわかりやすいように書くことで、採用担当者のこころを動かすことができます。ただ作ればよいと言うものではなく、自分の魅力をどのように伝えるかよく考えて工夫をすることが大切です。
ポイントとしては以下の3つを考えると内容が書きやすくなります。
- 現在のスキルがどうであるか。
- 自分が最も得意なところは何か。
- これからスキルアップしていきたい内容は何か。
3つのポイントをよく考えて、企業側がもう一度会いたいと感じることができるように内容を作っていきましょう。
ポートフォリオは1つではなく複数種類!その訳とは!?
ポートフォリオは、企業側に郵送で送る場合等を考えて1冊だけ作るのではなく、3冊作成することをお勧めします。
- 1冊目は郵送で送る場合に備えて。
- 2冊目は企業に訪問する際の持参用に準備。
- 3冊目は予備として作成。
3冊とも同じものを一度準備し、応募したい企業の業務内容に合わせて書類を差し替えて準備します。
書類を差し替えることで、より企業側に興味が湧いてくる1冊となるのです。予備が必要な理由として、郵送でも持参でも企業側が預かりじっくり見ていただきたい場合が発生いたしますので、就活をする上でポートフォリオが提出できない状態にならないようにしておきましょう。
もっと準備して多くの企業に応募すれば、どれかに採用になるかもと思われるかもしれません。実はそれ良くありません。まず、自分がどの企業に応募したのかも覚えていないこともありえます。
私は人事の経験もありますが、そういった中で面接時に何社ほど活動されましたかと聞くこともあります。応募者より10社応募しましたとか、20社応募しましたと話される方もいます。そんな方に限って就活を始めて短い期間で、応募先の企業の事をよく調べずにポートフォリオを提出されています。
1社1社に対して内容が異なるはずのポートフォリオが、自分だけの思いの作りになり内容が薄い、もしくは企業側が見当違いではと思うこともあります。
面接や面談の中で、
会社名を言う必要はありませんが、今まで応募したり面接した会社名と、どのようなデザインの仕事が中心であるか、思い出せますか?
と言う質問に対して、ドキッとされてその場の空気が止まるような時もあれば、顔が曇りがちになるとか、その後の話の内容が淡々となることがあります。
数応募すれば、どこか採用になるだろうと考えるのは見透かされます。1社1社考えてポートフォリオを作成する事を考えれば2〜3冊が丁寧に作れる範囲だと思います。
企業側から話がしたくなるポートフォリオの作り方!
ポイントを押さえて作成!その内容とは
デザイン系の企業には、応募者からのポートフォリオが随時郵送、持参等で提出されます。その中で目を引くように作成していくことが必要です。
ポートフォリオのフォーマットは特に決まっていないため、自由に作れますが「企業側」に提出を行う事を考慮すると、何でも良い作りではありません。
自分を売込むには、ポイントを押さえて作成しましょう。企業側が見るポイントとしては
- 現在までのスキルはどうか。
- 表現のセンスはどうか。
- どのような人物か。
- どのように仕事をしてきたか。
- 将来、仕事を任せられるか。
この項目を見ていくことが、ほとんではないかと思います。
企業によってはもっと深く考察されることもありますが、基本を押さえて作成しましょう。新卒の方や業界未経験の方は、デザイン系の仕事実績はありませんので、学校での作品や応募先の企業が主にしているデザイン系の仕事を、自分だったらこのように出来る、といった例を入れる事で作成できます。
ポートフォリオは面接で例えると最初の第一印象!
企業側も履歴書を見る時間よりもポートフォリオを見る時間の方が長いです。
長く見る分、最初のページがしっかり作られていないと他のページまで見てくれないかもしれません。ポートフォリオは自分の実力もわかれば人物像もわかる内容です。
面接では、面接室に入ってから30秒で印象が決まるとか聞くことがありますが、ポートフォリオでも同じことが言えます。ポートフォリオでは最初の3ページが印象での勝負だと思い、しっかり作りましょう。
ポートフォリオをしっかりと見せるには内容が簡潔に、見た目がスッキリとしている状態にします。アレコレこだわって、たくさんのテキストに画像をたくさん入れると、見た目がごちゃごちゃとした印象です。
これでは忙しい企業側も見る気にはならないです。ポートフォリオ1枚に入れる画像の枚数は3〜4点以内にとどめておきましょう。
また、絵が1枚1枚に書かれているだけのポートフォリオも企業側からすると何を伝えたいのか分かりません。相手の事を考えて作る必要があります。この相手の考えはユーザー目線といった感じでしょう。
自分のプロフィールと作品紹介をするにあたり自分だけがわかる、見て分かる人には分かる内容の作りだと、誰が見てもわかる内容にはなっていないため、企業側からするとお客様目線(ユーザー目線)での考えや、仕事ができないかもしれないと思われてしまいます。
ユーザー目線をさらに考えると入れる画像の大きさの統一感、入れる内容に対する余白の使い方、フォントの統一性や大きさ、行間等、細部に気をつける必要があります。
特にポートフォリオ作成が未経験の方の作り方として、一言で言うと「見た目の統一感がない。」ことが挙げられます。統一感がでるように作成してきましょう。
これは入れておこう!必須内容とは
どんなに良い作品があっても、見せ方で選考から外れてしまうこともあります。これではもったいないと思います。未経験でも職種が違う場合でも、最低限の事は入れなくてはいけません。
自己紹介
ここでの自己紹介は、履歴書の内容全てを書くわけではありません。
自分のデザインのこだわりや常日頃から思っている信念などを書きましょう。作品の受賞歴やいままでの仕事の実績、経験したポジションやリーダーシップ、担当した業務や担当部分などを書きましょう。
その他、使用できるソフトウェアなどを書きます。今では多言語ができる方も重要視されますので、ぜひ対応できる言語がある場合は言語も書きましょう。
目安としては1ページ以内にまとめます。どうしてもテキスト数が多い場合は、2ページ以内にしましょう。あまり自己紹介部分が長いと企業側も決まった時間内で読めません。短い時間で読める内容にしましょう。
作品紹介
作品ごとの作品への説明文は必ず入れましょう。
説明文章は作品のタイトル、作品画像、クライアント名称、制作年月日、作品のターゲット層、コンセプト、使用ソフトウェア等を書いていきます。一人で作り上げていないチームで制作した作品であれば、全体像と自分の担当部分を入れるといいでしょう。
作品数は10〜20作品以内にします。10以下ですと逆に少ないため、物足りなくなります。また多いと見きれません。ここでのポイントは、応募先の企業にとってこれが一番良い作品と思うものは、先頭へ持ってきます。その方が企業側の印象として残りやすいと思います。
仕事の手順や制作の手順
仕事をする上での基本的な進め方や自分の制作手順などを書きましょう。
これを書くことで、どれくらいソフトウェアを使えるのか、仕事の進行手順がわかっているか伝わりやすくなると思います。この項目は1〜2ページが良いでしょう。
将来のビジョン
ビジョンの考え方としては、近い将来、中期目標、大きな目標の3つを考えましょう。
いきなりこんな事が出来るようになりたいだけの一文にならないようにしましょう。書き方としてはいろいろありますが、箇条書き+説明分があるとより伝わりやすいでしょう。この項目も1〜2ページが良いでしょう。
少なくても「自己紹介」1ページ、「作品紹介」12ページ、「仕事の手順や制作の手順」1ページ、「将来のビジョン」1ページの合計15ページを目標に作り上げましょう。多い場合は25ページ程度にしておきましょう。
ポートフォリオは自分の財産!その理由とは
ポートフォリオは進化するもの
就職が決まってしまったらポートフォリオはいらないと思っていませんか?
実は、ポートフォリオは、日々努力してきたものをファイリングすることが、スキルアップにつながります。次のステップアップに向けて書類の精査を行いましょう。
全ては必要ありませんが、自分でこれは良い作品と思うものがあれば、ポートフォリオの形にしておくことで「実務でも使える!過去から学ぶアイデアブック」としても利用できます。
作成当時のコンセプトや作り方などを良い意味で反省し次のデザインへ活かしていくことができます。もっとこのようにすればよかった。作り方は次回このように変更しよう等、自分自身の成長とモチベーションアップにもつながります。
最初のポートフォリオ作成時間は、何十時間もかけていることだと思います。だからこそポートフォリオとしての役目だけで終わらせるのは、もったいないと思います。
フィードバックでより良い内容へ
学生であれば先生等に見ていただく機会はあるのですが、一度社会人になると転職のために職場へポートフォリオのことで聞くことはできません。
自分で見直していく必要があります。自分で見直す場合、最初は作成後すぐに見直せる所として、誤字脱字がないかをチェックする程度にしておきます。後日、改めて文章がおかしくないかをチェックしていくことで工程を分けてみるといいと思います。
文章チェックが終わったら、今度は実際に提出すると仮定して、ポートフォリオを友人・知人に見せてみるのも良いかと思います。思わぬご意見、アドヴァイスが頂けるかもしれません。
友人・知人に見せない場合は、作成後1週間程度寝かせて改めて見ると、修正する部分が浮かんで見えるかもしれません。
これは不思議と実業務でも同じで制作後、納品まで行い気持ちよく仕事ができたと思っていても、期間をあけて改めて見直すと「ここをもう少しこうしておけば良かったかな」と思う事も結構あります。簡単に言うと「落ち着いて内容を見る」これが意外に効果があります。
自分をアップデート!モチベーションもアップ!
ポートフォリオの作り方としては経験、未経験問わずに頑張ればできることだと思います。
ただポートフォリオ作成は時間と労力がかかるため、作成途中でモチベーションが下がってしまうこともあります。そんな時には、自分がどのようにやって出来るようになったのか思い出してください。
きっとポートフォリオを作るときよりも、仕事や作品を制作するときのほうが大変だったと思います。仕事や作品を制作するときには、分からないことがあればいろいろと調べられたことだと思います。
私は少し大きな仕事にも携わることもあり、やり遂げて大きな達成感を得られた時や自分の中で新しいデザインの表現方法が得られたりした時には、「自分すごいなぁ」と自分を褒めています。
自分を褒めると聞くと、そんな恥ずかしいことをと思うかもしれません。実際、私が会社で働いていると同僚から時々こんな声も聞こえてきます。「俺すごい!」「私がんばった!」等、自分を褒めることは何も恥ずかしいことではないです。
自分を褒めることで、モチベーションをアップしてスキルを習得して、自分をアップデートしてきましょう。モチベーションがアップできればポートフォリオ作成はきっと楽しい時間になると思います。
最初はテンプレート!次は自分流で進化させよう!
テンプレートで作り方の基本をマスター
決まった形がないポートフォリオですので、最初はどのような形が良いか思いつかないかもしれません。未経験でも簡単に作成できるテンプレートでの作り方をご紹介いたします。
表紙
表紙のデザインは極力シンプルに作りますが、フォントの選択次第で見た目は大きく変わってきますので、ゴシック体、明朝体を主体に英文字フォントも近いものを選択しましょう。
目次
目次はテキストだけの情報だけにならないように工夫します。制作実績(作品紹介)をビジュアルで見せる目次としてプレビュー画像を入れていきましょう。
自己紹介(プロフィール)
自己紹介は受賞歴や学校での受賞作品を入れていきましょう。自己紹介文章は、いつ、どこに入社(入学)したのか、どのような実績を作ってきたのかを入れると良いでしょう。
制作実績(作品実績)
制作実績は、1作品につき1ページで説明を入れていきます。この時に上部には全体像がわかる状態で入れていきます。下2つは、どのように工夫したか、複数人でのプロジェクトで作成しているのであれば、自分が担当した部分をアップで入れていきましょう。
仕事の手順や制作の手順
手順は各人で異なってくるかと思いますが、実はこれが良いところでもあり悪いところもでてしまいます。
ここで、例えばソフトウェアの使い方を書いて見るのも良いと思います。
- Illustratorのレイヤー構成
- 仕事進行の手順
企業側としては、ここで個性がでる、仕事の丁寧さもわかる部分です。
特にレイヤー構成については、自分だけが理解できるような構成よりも、次回別担当者でも理解できるレイヤーの構成になっていれば仕事が出来ると判断されます。レイヤーがきちんとできれば、ほかの仕事面でもきちんと出来るのではないかと思われます。
将来のビジョン
ビジョンは極力、短期目標をどれくらい進めているのか、中期目標は着手できているのか、大きな目標には、今の自分には何が必要なのか入れてみましょう。
最後に
最後は編集後記のようなイメージで考えましょう。作品を通して自分がどのように成長できたのか、ポートフォリオを作成するにあたりどのような事を思っていたのか等を入れると良いと思います。
ポートフォリオのサンプルデータ
今回サイトで使用した画像は、Illustratorで制作しています。
ポートフォリオの作り方がわからない、未経験の方にまずはサンプルデータで一度制作をしてみましょう。今回はサンプルデータですので自分流にアレンジを行ってみてください。
例えば、フォントを変更する。フォントの大きさを変更する。色を変える。レイアウトを少し変更してみることでオリジナルのポートフォリオができあがります。
制作に慣れてきましたら、本当に自分のオリジナルポートフォリオを作成してみましょう。
ダウンロードはこちら「portfolio_sample.zip」
データ収録内容:IllustratorCS4形式、IllustratorCS4アウトライン形式、PDF、プレビューJPEG
紙のポートフォリオが出来上がりましたら、Webポートフォリオの作成もチャレンジしてみましょう。無料で作成できるWebポートフォリオの作り方は下記を参考にしてみてください。
「Googleサイトを利用したデザイン初心者でもできる無料Webポートフォリオの作り方とは!?」はこちらから
今回のポートフォリオの作り方のまとめ
- ポートフォリオは自己分析と実績の小冊子。
- 提出を意識してユーザー目線で作成。
- 使い切りではない、仕事でも転職でも使えるようにする。
- 最初はテンプレートで制作、将来はオリジナルポートフォリオデザインへ。
ポートフォリオは、履歴書や職務経歴書よりもじっくり見られるものです。しっかりとした作り込みを意識しましょう。
細かい事を書きますと、書体も見やすい見にくいが用途によってわかれてきます。なぜ細かいことまでお伝えするかと言いますと、細かい事まで企業側は見ているからです。細かいことができるのであれば、未経験でも仕事はきちんとやってくれるだろうと考えるのが自然です。
面接で緊張して少々うまくできなくても、ポートフォリオはしっかりと自分の力量を伝えてくれます。だからこそ見やすさや内容のわかりやすさにこだわって作成しましょう。